第4章 株式を売買してみよう


■ 法律違反になる取引がある

 証券市場では、有価証券の公正な価格形成が行われなければいけません。
そのために、株取引は決められたルールに従って取引がされるように、法律で厳しく定められています。
これらを破って違法行為を繰り返した場合、懲役や罰金などの重い罰則や処分が課せられます。
禁止行為を認識して、公正な取引をしましょう。
 ですが、下記に当たるような注文は、証券会社で規制をしていることがあるので、
注文エラー(注文不可または失効)になることがあります。


■ 現在の株価に対しての規制

 空売り(信用売り)を行う場合、直近公表価格(現在の株価)に規制が設けられていて、
現在の株価に対し、安い価格で発注(成行含む)を行う事を禁止しています。
これに、違反すると30万円以下の過料が課されることがあります。


・リアルタイムで株価が上がっている時、現在の株価と同じ価格までの注文しかできません。
・リアルタイムで株価が下がっている時、現在の株価より1つ上の価格までの注文しか出せません。


■ 注文数によっても規制される

 そして、1回の発注につき51単元以上の新規売の注文をする場合や、
短時間で1つの銘柄について合算で51単元以上の新規売の注文をする場合は、
以下のような条件があります。


・現在値よりも高い指値で注文をする。
・成行注文は出さない。
・寄付前については前日の終値より高い指値での注文をする。


 しかし、50単元以内の新規売の注文、及び51単元以上の注文であっても、
新規売以外の注文については、空売り規制は適用されません。
 ですが、引け後、寄付前の注文につきましては短時間内での注文ではなくても同一注文とみなされます。
また、50単元以内に分割した数量を短時間で連続して発注した場合も、規制の適用を受けます。


■ 公表される前の重要情報を知った場合

 インサイダー取引とは、上場会社等の役職員など会社関係者が、
その会社の株価に影響を及ぼす重要事実を知って、
その重要事実が公表される前に、その会社の株式の売買などを行うことをいいます。
 また、会社関係者から未公表の重要事実の伝達を受けた者(情報受領者)や、
利益を得る目的がなかったとしてもインサイダー取引と見なされる事があります。


 このような取引が行われると、こうした情報を知らない一般投資家にとって不利となり、
取引市場の公正性や健全性が損なわれる恐れがあるため禁止されています。


 インサイダー取引を行った場合、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、
またはその両方を課せられる恐れがあります。
そして、インサイダー取引によって得た財産は没収されます。


 インサイダー取引と疑われないため、
自分が勤めている会社及びその関係会社の株の売買をする際は、
自分がインサイダー情報を持っていないかどうかを十分に確認した上で売買しましょう。


■ 株価を意図的に動かした場合

 相場操縦的行為とは、相場を意識的・人為的に変動させたり、
あるいは一定水準の価格に固定させたりして、その相場があたかも自然の需給関係が成立しているかのように、
他人を誤解させることによって、その相場の変動などを利用して利益を得ようとする行為のことです。
つまり、株価を自分の思うがままに動かそうとすることを証券取引法で禁止しています。
このような行為は、市場での公正な価格形成を妨げ、
一般の投資家に不測の損害をもたらすこととなるため禁止されています。


 相場操縦的行為を行った場合、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、
またはその両方を課せられる恐れがあります。
 そして、財産上の利益を得る目的で相場操縦的行為を行い、その相場により取引を行った場合は、
10年以下の懲役及び3000万円以下の罰金が課せられる恐れがあります。
さらに、相場操縦的な行為によって得た財産は没収されます。


 相場操縦的行為には、以下のような方法があります。


■ 見せ玉

 見せ玉とは、売買を成立させるつもりがないのに、
ある特定の株式などに対する大量の売買注文の発注・取消・訂正を頻繁に繰り返し、
あたかもその株式相場が活発なように見せかけて、他の投資家からの取引を誘い込もうとする取引です。
以下のような注文方法があります。


・自己の売付注文が約定した直後に、大量の買付注文を全て取り消す。
・自己の買付注文が約定した直後に、大量の売付注文を全て取り消す。
・指値の価格帯や発注の数量などで、買い板や売り板を厚く見せかけ、
 他の投資家からの売買を誘い込む効果がある場合。
・上記行為を反復継続して行っている場合。
・行為者の通常の取引の規模からして、過大な量の発注をしている。


■ 仮装売買

 仮装売買とはある特定の株式などの売買の状況に関して他人を誤解させる目的で、
同一人物が同じ時期に同じ価格で売りと買いの注文を行うなど、
権利の移転や金銭のやりとりなどを目的としない仮装の取引です。
別々の証券会社に対して、同じ時期に同じ価格で売りと買いの注文を出さないようにしましょう。


■ 馴合売買

 ある特定の株式の売買状況に関して、他人を誤解させる目的で、
知り合い同士の売主と買主が示し合わせて、同じ時期に同じ価格で売りと買いの注文を出す取引です。
仮装売買を知人と一緒にした場合と考えてよいでしょう。


■ その他の相場操縦的行為

 上記の他にも以下ような注文方法により、相場操縦的行為と疑われる場合があります。


1. 市場関与率が高い状況が継続している場合での取引
・出来高の少ない銘柄で買い注文のほとんどを売り付ける取引を反復する。
・出来高の少ない銘柄で売り注文のほとんどを取引を反復する。
・直近の出来高に比べて大量の注文を発注し、買い上がる、または売り崩すような取引を行う。
・立会終了間際に大量の注文を発注する。


2. 買い上がる注文・売り崩す注文
・短時間に株価が急騰(または急落)している銘柄について、買い上がる(または売り崩す)ような注文をする。
・直近の出来高に比べて大量の注文を発注して、買い上がる(または売り崩す)ような取引を行う。
・一日のうちで(または複数日に渡って)反復継続して買い上がる(または売り崩す)ような注文を発注する。


3. 高値を付ける注文・安値を付ける注文
・当日の高値を付ける取引を反復する。安値を付ける取引を反復する。
・高値形成後、直ちに追随する取引を行う。安値形成後、直ちに追随する取引を行う。
・複数日に渡って反復継続した高値を付ける取引を行う。複数日に渡って反復継続した安値を付ける取引を行う。


4. 株価を固定させるような注文
・市場の売り(または買い)数量に合わせた買い(または売り)数量の注文を発注する。
・出来高の少ない銘柄で売り注文のほとんどを買付ける取引を反復する。
・株価の下支え(または頭押さえ)の効果を持つ大量の注文を発注する。
・一日において(または複数日に渡って)株価を下支える(または頭を押さえる)ような反復継続した注文を発注する。
・下値(または上値)の大口指値注文の一部を順次高く(または低く)変更する。


5. 終値関与
・立会終了時を含む特定の時間帯において大量の注文を発注する。
・当日の(または複数日に渡っての)立会終了時を含む特定の時間帯において反復継続した注文を発注する。
・複数日に渡って反復継続した引成注文を発注する。


■ 利益を得るために噂を流す

 風説の流布とは、ある特定の株式などの相場の変動を図る目的で、
虚偽の情報や根拠のない噂を流すことをいいます。


 このような行為は、一般の投資家に不測の損害をもたらすこととなるため禁止されています。
風説の流布を行った場合、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、
またはその両方を課せられる恐れがあります。
 財産上の利益を得る目的で風説の流布を行い、その相場により取引を行った場合は、
10年以下の懲役及び3000万円以下の罰金に課せられる恐れがあります。


 近年、インターネット掲示板などに証券取引や上場会社等に関して、
様々な情報が書き込まれているのが見られます。
 意図的に株価を操作する目的で、事実関係がきちんと確認されていない情報や、
合理的な根拠がない事柄を安易に掲示板に書き込む行為は、
証券投資を行わないにしても、風説の流布に該当する可能性があります。


 仮名取引とは、実際にはいない人物の名義や他人の名義などを使うことによって、
自分の素性を隠して行う取引のことです。
 借名取引とは、家族や友人など自分以外の名義を借りた上で、
名義人になりすまして行う取引のことです。
 このような取引は、脱税やマネーロンダリングといった行為の温床となる可能性があることや、
相場操縦といった不公正取引に利用される可能性があるため禁止されています。


ポイント 禁止事項を把握して、罪に問われないようにしよう
ポイント 禁止事項にあたる注文はエラーが起きる

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