第5章 株価を予測する1 「ファンダメンタル分析」


 企業の株価を調べると、必ずと言っていいほどこの指標が現れます。
株の取引はできても、知らないと何のことかさっぱりな単語だと思うので、一度に解説していきます。


理解するのが面倒だと言う方は、
 ・各指標が高ければ株価は高い(割高)
 ・各指標が低ければ株価は安い(割安)

ということと、各目安を簡単に覚えればいいのかもしれません。


■ PERとEPSとは?

 PERとは、企業の収益力と株価を比較することによって、株価がどの程度の水準にあるのかが分かる指標です。
簡単に言えば、会社の出す利益に対して、今の株価が安いのか高いのかを判断するわけです。
また、同業他社と比較することで、割高なのか割安なのかを判断するときにも便利な指標です。
「PER = 株価 ÷ 1株当たり利益(EPS)」で求めることができます。


 EPSとは、企業が1年間に1株当たりいくらの利益を出したのかを表したものです。
株主から集めた資金で、企業がどれだけの利益を上げたのかという収益力を知ることができるのです。
「EPS = 当期純利益 ÷ 普通株式の期中平均発行済株式数」で求められます。


 これらのことから、PERは「今の株価が1株あたり利益(EPS)の何倍に当たるのか」が分かります。
つまり、今の株価と同等の投資資金を回収するには、何年かかるのかがPERで分かるわけです。
 例えば、PER10倍の会社があり、その会社が将来も変わらずに同じ利益を稼ぎ続けたと仮定すれば、
その会社の10年分の利益を積み上げると現在の株価に一致します。
PERが20倍であれば20年分、30倍であれば30年分の利益を積み上げることで時価総額に一致することになります。


■ 株価の割安、割高を判断する

 PERが小さい数値ほど株価が割安で、高いほど割高だと考えられます。
一般的な目安として、20倍以上なら割高、20倍以下なら割安とされています。


 例えば、A社の株価が1000円で、1株当たり利益が同じ50円ならば、PERは20倍です。
B社の株価が500円で、1株当たり利益が50円ならば、PERは10倍になります。
 この場合、A社のほうがB社より人気があって、買われているということになりますが、
B社はA社と同じEPSなので「B社の株価は割安だ」という比較ができるのです。


 優良企業ならば株価が上昇し、そうなるとPERも大きくなる傾向にあります。
そして、PERが高ければ、人気がある銘柄のため株価が割高で、投資効率が低いと考えられます。
なので、現在持っている資金でどの程度の利益が生まれるのかという投資効率を判断できるのです。
 ただPERには、これ以下が割安で、これ以上が割高といった明確な基準がないため、
上記の例のように、他の銘柄の価値と比較することで判断する必要があります。


■ PBRとBPSとは?

 PBRとは、1株あたり純資産額に対する株価の倍率(状況)を測る指標です。
企業の資産面から、企業価値に見合った株価かどうかを判断するのに役立ちます。
この数値が高いと株価が割高、低いと割安と判断できます。
「PBR(株価純資産倍率) = 株価 ÷ 1株あたり純資産額(BPS)」で求めることができます。


 株主が出資した会社が解散した場合、持ち株数に応じて会社の資産を分配する権利が与えられています。
BPS(1株あたり純資産額)とは、会社が解散した時に、
1株当たりいくらの資産を返還し、分配されるかを表した指標です。
BPSも、数値が高いと株価が割高、低いと割安と判断できます。


 また、純資産とは、会社の資産総額から負債総額を差し引いた金額です。
貸借対照表の「資本の部」といえば分かりやすいでしょう。


■ PBRの基準は1倍

 PBRは、株価の下落時の底値(下値)を探る指標としても使われます。
一般的に、PBRが1倍で、会社の清算時の価格と現在の株価が一致しているということになります。
そのため、PBR水準1倍が株価の下限であると考えられるため、底値を推測できるのです。
つまり、PBRが1倍を下回っていれば、株価は底値圏にあり、割安だといえるでしょう。
1倍を下回っているということは買い時と考えられますが、何らかの問題を抱えている可能性があるので、
必ずしも買い時になるわけではありません。


 また、PER(株価収益率)が異常値になった場合の補完的な尺度としても有効です。
ただし、PBRは純資産で算出しているため、企業の短期的な株価変動に対しては、
投資尺度になりにくいという点があります。
将来の利益成長力も反映しにくいため、PBR単独で投資尺度にするには問題があるのです。
そのため、PBRもPERと同様に、他の銘柄と比較することで、割安か割高なのかを判断しましょう。


■ アメリカで重視されているROE

 ROEとは、会社が株主から集めた資金に対し、企業がどれだけ利益を生み出しているのかがわかる指標です。
そのため、配当能力を測定する指標としても使われています。
以前は、株主資本利益率とも呼ばれていました。
「ROE = 当期純利益 ÷ 株主資本 × 100」または、
「ROE = 一株当たり当期純利益(EPS) ÷ 一株当たり純資産額(BPS)」で求めることができます。


 このROE値が高いほど、株主資本をより効率的に活用し、より多くの利益を上げていることになります。
つまり、株主の期待に応えていればいるだけ高くなると考えられます。
アメリカの投資家が「投下した資本に対し、企業がどれだけの利益を上げられるのか」という点を重視したことで、
アメリカの市場で重要視されてきた指標ですが、最近の日本企業でもROEを高めようとしているようです。


■ ROE10%以上で評価できる

 一般的に、ROEが高いほど会社の成長性があり、配当など株主還元も期待できるということになります。
ROE10%以上の会社が、株主の期待に応えている会社といえるでしょう。
 しかしROEは、純資産(自己資本)が小さいと高めになります。
ですから、いくらこの値が高くても、今後の成長が期待できない場合は投資する魅力がありません。
ほかの指標と組み合わせて判断していきましょう。


ポイント 株価が割安か割高なのかを判断するPER
ポイント 来期予想利益から株価が割安か割高なのかを判断するPBR
ポイント 出資金が効率的に活用されているのかが分かるROE

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